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スクウェア・エニックスで「働く」ストーリー

『ファイナルファンタジーVII』リメイクプロジェクトの3D背景アーティストが語るリメイクのこだわりとは

こんにちは、スクウェア・エニックス 採用担当 平山です。

スクウェア・エニックスでは、世界観に深みを持たせる背景アートの制作には大きなこだわりをもっています。

美しいグラフィックスを表現するだけでなく、その世界に息づくキャラクターをよりリアルに感じさせる背景アートの役割とは何か。
最高の「物語」を表現する背景アート制作を追求しています。

今回は、3D背景アーティストのお二人に、『ファイナルファンタジーVII』リメイクプロジェクトの制作において、ファンの期待を裏切らず、新しいファンを獲得するためにアートができることや、こだわりポイント、スクウェア・エニックスで働くアーティストとしての心構えについてインタビューしています。

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第一開発事業本部 左:三宅 貴子 右:市原 麻菜

お二人の入社経緯を教えてください。

三宅: 私は、当時あった研究室という制度を利用したアルバイトからの入社で、スクウェア・エニックスに勤めて20年ぐらいになります。スクウェア・エニックスは憧れの会社でしたね。とくに背景アートに感銘を受けてアーティスト志望で入社しました。

市原: 私は2021年に中途で入社しました。前職は主に映像の背景制作などを行なっていて、そのときに取引先としてスクウェア・エニックスの仕事をしていました。『ファイナルファンタジーVIIリメイク』の開発にも参加させていただきまして、それがすごく楽しくて、そういったご縁もあってスクウェア・エニックスに入社しました。市原: 私は2021年に中途で入社しました。前職は主に映像の背景制作などを行なっていて、そのときに取引先としてスクウェア・エニックスの仕事をしていました。『ファイナルファンタジーVIIリメイク』の開発にも参加させていただきまして、それがすごく楽しくて、そういったご縁もあってスクウェア・エニックスに入社しました。

『ファイナルファンタジー』シリーズなどのゲームコンテンツに興味があったのですか?

三宅: 私は学生時代にゲームに出会って大変楽しいなと感じて、ゲームを作りたいと強く思うようになりました。入社してからは、いい意味で周囲の人間に感化されて大量にアニメーションを見たり、読み漁ったりしました。三宅: 私は学生時代にゲームに出会って大変楽しいなと感じて、ゲームを作りたいと強く思うようになりました。入社してからは、いい意味で周囲の人間に感化されて大量にアニメーションを見たり、読み漁ったりしました。

市原: 私の場合は、オリジナルの『ファイナルファンタジーVII』を小学生の頃から遊んでいたユーザーではありましたし、ゲームってすごいなと思っていました。また自分が進路とかを考える年に病気をしたこともあって就職の方向性に迷っていたときに、CG業界なら自分でも好きを活かして働けるんじゃないか。そこからこの業界にご縁をいただき、今に至っています。

入社してからはどのような作品開発に携わったのでしょうか。

三宅: 印象に残っているのは『ファイナルファンタジーIX』ですね。私が最初に参加した作品です。あの頃は右も左もわからず怒涛のような日々で、毎日が緊張の連続だったので1日1日を鮮明に覚えています。とはいえ作品の世界観が作り手としてすごく魅力的で大変楽しかったです。

市原: 私の場合は2021年からになりますので『ファイナルファンタジーVIIリメイク』ですね。例えば、自分の作った3DCGをゲームのエンジンに乗せてみたり、その3DCGを実際に遊びながら意見を交わしたり、バグの修正までしたり、それらがすべて初めての経験でとても印象に残っている作品です。

『ファイナルファンタジーVII』リメイクプロジェクトでの業務について教えてください。

三宅: 私は背景セクションのセクションリーダーをしています。チームの特徴として、セクション間で協力して作り上げるという風土がとても強くて、常に関係セクションが協力しています。話し合いとかやり取りが常に行われていると、ハブになる人間がいないと話が進みません。そのため私や市原みたいなリーダーが、間に立って他セクションとのつなぎになっています。私が主に担当しているのはセクションリーダー間の折衝などのやり取りですね。各セクションが勝手に動くと無軌道なものになってしまうので、お互い協力してハーモニーを奏でるために、どこを活かしてどこを抑えるかを折衝するということが私の仕事になります。他に、アーティストに対してのスーパーバイザーのような業務も中心になっています。

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セクションは、職種毎でポジションが分かれているイメージでしょうか?

三宅: はい。背景やキャラクター、アニメーションやエフェクト、ライティングする人など、多様にポジションが分かれています。

市原: わたしの業務は、ゲームの中の背景ロケーションで「Aの町」「Bの村」のようなものがあったときに、そこを1つ担当者として任されています。ゲームで「ここは町のメインストリートだから、きっとお店があるよね」とか、「お店があるなら何が売っているのかな?」というように、ロケーションの説得感を作り上げていくために、横のセクションとやり取りをして作業を進めています。そのやり取りで出た提案に対して「これが作られてないのでどうしますか?」みたいなのことも話し合っていきますし、もうちょっと上の方で揉んで欲しいということがあれば三宅さんにお願いしています。やはり規模が大きいためロケーション単位で開発の区切りをつけることが必要だと思っています。

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かなり細かく分かれている印象を受けましたが、規模が大きい開発現場の特徴なのでしょうか?

三宅: 私が以前に背景制作に関わっていたプロジェクトでは背景班が私1人ということもありましたし、やはり規模によりますね。ゲームの開発規模が大きいと分業せざるを得なくなります。分業するには分業されたところの流れを良くする必要があるので、セクションリーダーがセクション間の折衝者として立ち、さらに背景セクション内でいうと、ロケーションが町や村ごとに担当を立てて折衝してもらっています。市原さんにはその土地の「領主」として責任を持ってロケーションを治めていただきました(笑)。

『ファイナルファンタジーVII』リメイクプロジェクト背景制作で意識していることはどんなところでしょうか。

三宅: 『ファイナルファンタジーVII』のリメイクを作るにあたり、強く意識している軸が2つあります。1つは『ファイナルファンタジーVII』をプレイした人を必ず楽しませて、失望させないということ、そしてもう1つは『ファイナルファンタジーVII』の魅力を知らない人に対して広めるということです。

開発途中で表現に迷ったときにも『ファイナルファンタジーVII』の世界設定は崩さないように知恵を絞ります。当時オリジナルの『ファイナルファンタジーVII』は見下ろし型のカメラでしたから、上が見えないシーンでは「上ってどうなっているんだ?」というのをそれぞれが脳内補完しながら遊んでいたと思うんです。そうだとしたら、私たちはみんなが想像していた部分を具現化しよう、ということを背景の製作テーマとして掲げました。そこで、最初にしたことは、絵作りをおもむろに始めるのではなくて、『ファイナルファンタジーVII』を読み解いて、設定の深堀を始めることでした。

例えば、ここにパイプが置いてあるけど「このパイプとは何なの?」というところから始めました。さらにそこにストーリーが展開されます。生活しているNPCが「その世界でどう生きているのか」というところもシナリオチームや企画チームと連携していました。

『ファイナルファンタジーVII』の住民がどんな心持ちで生きていたのか」を想像して、見た目の部分だけではなく、心情の部分も分析して描くというところをテーマに深堀します。あとは最新の作品ですので、グラフィッククオリティをなるべくリアルに作り込みました。 『ファイナルファンタジーVII』の設定と今の技術を合わせ作り上げていった結果の先に、当時『ファイナルファンタジーVII』をプレイしていた方々が想像していた脳内補完があると信じて作り上げました。前作で多くのユーザーさんから設定の深堀に対してとてもご好評いただいたので、今回もしっかり深堀しています。

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リメイクにあたって「今ならこういう表現をする」など意識したことはありますか?

三宅: 思い浮かぶ例としては「壱番魔晄炉」のアート制作ですね。『ファイナルファンタジーVII』の世界はすごく魅力的ですが、そこで人が生活している様子を今回すごく見せたかったので、深堀してアートの設定を考えていきました。現在の一般的な工場や施設などをイメージすると、従業員が歩くところは危険がないようにシートが敷いてある。そういうことを考えていって設定をつなぎ合わせていくと、そこにいるNPCたちが毎日出勤するのであれば、『ファイナルファンタジーVII』の世界基準の労働者が働く環境にしよう」ということで結構変わってくる部分がありました。

そのように細部を詰めていって『ファイナルファンタジーVII』の世界に住んでいる住人にとっての常識を想像しながら『ファイナルファンタジーVII』の世界観に則ってリメイクしました。ですので、現代の私たちの感覚だとおかしいとかダサいとかいわれるかもな、というものもあえてそのままにしていたりします。

市原: 皆さんの脳内補完された当時のイメージを一番具現化できるのは私たち背景アートだと思うので「私はこう解釈して作ってみたけどどうですか?」みたいものを共有し合って、フィードバックをもらったり修正したり、あるいは「ここは譲れません」みたいなことをまとめて作り上げていったというのはあります。

また、チーム内が幅広い年齢層でして、ジェネレーションギャップじゃないですけど、年齢が上の人には伝わるネタでも下の人には分からないみたいなことがあるなら「多分それは表現としてよくない」とか、若手にプレイしてもらって「これ意味通じる?」などを聞いたりするのをしょっちゅうやっていました。大ファンの人には「思い出を崩してませんか?」とか確認していました。

オンラインでのコミュニケーションも増えていると思いますが、開発の中で変化したことはありますか?

市原: 在宅勤務が増えて、オンライン会議が増えました。今までだと口頭で終っていたやり取りもチャットベースみたいになって履歴として残るため、すごく情報が可視化されました。 動いているものが分かりやすくなって「それってこっちにも関係ありますよね」みたいなキャッチアップも早くできています。

三宅: 調整のための管理者の負担がめちゃくちゃ減りましたね。
リーダーとして個別の会議に出ることがあるんですけど、ちょっと市原の方の技術の分野の話で私では分からなくて困ったなというときに、すぐにチャット飛ばして入ってもらったりもできますし、逆に上に確認したいことやトップダウンしてほしい決定事項があるときにもタイミングを合わせやすくなりました。

情報がすごく入ってくるようになったので、取りまとめをするリーダーの重要性が増したと感じます。メンバーも相談しやすくなりました。あと、うちの部署ではとくに部内広報の方がすごく頑張っていて開発状況やゲームプレイしているデバッグ動画みたいなものを共有してくれているので、今の進捗の進み具合や普段関係の薄いセクションの内情もわかるようになり、とっても刺激になります。

市原: 先日はカットシーンの方が担当されているダンスシーンみたいなモーションキャプチャーの現場を見せていただいて、こんな風に撮ってるのかと感心しました。オンラインになりいろいろな情報が見やすくなりましたね。

背景アーティストとして働く上で、大事にしていることは何ですか?

三宅: 「ゲームをプレイするプレイヤーを楽しませたい」というのが第1にあります。ただ、私もアーティストですので「自分が楽しいから作る」とか「自分を楽しませたい」という気持ちは出てきますね。自分が楽しいものは人も楽しいだろうと思ってしまうことがありますが、決してそうとは限らない。
私だけが楽しくても、人は楽しくないことは大いにあるわけで、そういう理解を大事にしています。あくまで楽しませるのは、プレイしてくれる人だということを常に意識しています。ただ、アイディアの源泉みたいなところは、やっぱり自分の情熱みたいなところが出てくることがあるので、そこのバランスを取るようにしています。

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市原: 私の大事にするところですが、やはりキャラクターがいて、そのキャラクターはゲームの中で会話をしたり、動作をしたり、そのキャラクターは過去があって今を生きているみたいなものの後ろに背景があると思うので、「本当は何かバックグラウンドを持っているキャラクターだ」とか「こう見えても可愛いものが好きだ」みたいなものについて、背景のちょっとしたところで何か表現できないかなと思っています。 キャラを引き立てるためのバックグラウンドとしての背景アートということは常に意識しています。

ゲームを開発する中で、アーティストとして習得したものはありましたか?

三宅: 私たちの仕事は、常に絵作りの技術と共にあるので、何かを習得したらそれで終わりということが一切ないです。『ファイナルファンタジーIX』の頃に出会えた先輩から言われた言葉があります。 "ゲームで使っている映像技術よりも常に上の技術があると思え"という言葉です。そもそもゲームの映像表現はカメラなどの映像技術を追いかけますし、もっと突き詰めると、自然そのものが美しい。「感動的な旅行をして楽しいな」という気持ちをユーザーに提供したいのであり、それを表現するために開発しているのでその言葉を忘れずにいます。

ご自身の情熱を湧きたたせるためにしていることはありますか?

市原: 自分がユーザーとして楽しめるコンテンツなどがあるといいのかなと思います。いわゆる「推し」がいる状態ですね。自分が作り手として感動を与える立場のときに、どう表現しようということをすごく考えるようになります。

三宅: 何にでも興味を持つようにしています。普通に通勤経路を歩いていても、その辺に落ちているゴミでも、誰がどういう経緯で捨てたのかなとか、何か生活の名残りみたいなものを見つけたときに、人がいないのにその名残りを見つけるということは、その背景って魅力的なんだなと思うので、こんな感じでレイアウトしておくと人がいた風景になるのかとか、そういうのを通勤中も興味深く見ながら歩いています。あとは人を感動させたいというのがあるので、映画を見たり旅行に行った時などに自分の中に湧きあがった感情を「どうしたら絵に込められるかな」ということを意識しています。

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今回のプロジェクトでは、背景アーティストにはどういうスキルや経験を求めていますか?

三宅: プロジェクトの規模が大きくて背景班の中でも分業しているので、各分野で突出した方は活躍してもらえると思います。

市原: 例えば、とにかく絵作りが大好きでセンスとクオリティを突き詰められるアーティスト。 また、レベルデザイン寄りの方や、背景の絵としての魅力の他に、その土地の風土や歴史をプランナーと共に考えて理論の観点からレイアウトが行えるというという方も活躍できると思います。他には、絵としての視線誘導ができる方ですとか、アセットのクオリティを追求できるような方ですね。例えば、この石の材質は花崗岩だから、それなら「ここの土地には火山があるはずだ」みたいな感じで、表現するアートに対してのこだわりを見せられる人やそういうところまで突き詰められる人も良いですね。

また、大規模開発なので大量のアセットが必要になってきます。そこの品質や世界観がずれないようにクオリティとかアートの管理を行えるような方も求めています。あとはテクニカルアーティストですね。パイプラインやツールの開発、整備、技術面でのサポートができる方。絵は作れないけど、実装やそこでの最適化などの現場経験が豊富にあって「こういうデータを載せるとメモリがどうなるよね」とか、ゲームの観点から背景を作れるという「背景の管理」ができる方も募集をしています。

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三宅: 繰り返しになりますが、各分野で突出した方は活躍してもらえると思います。ゲームはプレイしないけど人を楽しませるのが好きな人とか、大勢でのもの作りが好きな方とか、最高の作品を作り上げるための努力ができる方は大歓迎です。有名タイトルであることや開発規模感から、ちょっと臆してしまう方もいるかもしれないですけども、ぜひご応募いただければと思います。

市原: 私のようにゲーム制作の経験がなくても、自分が強みとしているところを何かしら生かせる環境があるので、興味がある方はぜひ一緒に働きましょう。

当インタビューはシリコンスタジオエージェントが実施したものを、スクウェア・エニックスが再編集の上、掲載しております。